本感想

大人になって読む童話『長靴をはいた猫』

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今回読んだのはシャルル・ペロー童話集長靴をはいた猫であります。
前回に続き澁澤龍彦さんの翻訳本、そして河出文庫
アイ・ラブ・河出文庫

シャルル・ペロー17世紀フランス詩人
思想や文芸の分野において古代ギリシャ人・ローマ人と(当時の)近代人を比較してどちらが優れているかという新旧論争が持ち上がった際、ペロー近代人の優を主張し古典主義者から反発を食らったそうな。
昔の○○は凄かった~的な話は現在でも各所で時折みられますが、なんとも不毛な言い争いですね。

同書はペローがヨーロッパで古くから親しまれている民話昔話を収集し執筆したもの。
グリム童話にも収録されている「赤ずきん」や「シンデレラ」などの有名な話も入っており、別の作家の手が入るとこうも変わってくるのかとある種新鮮な気持ちで読めます。

各話の最後にペローによるその物語における「教訓」も添えられており、彼が童話で読み手(子供達)何を伝えたいのか、どう読み取って欲しいのか明け透けに綴っているようで面白い。
カバーも飾っている絵本作家・片山健さんの美麗ながら何処か不気味な挿絵も多数収録されており、朝の読書ラノベを読むような眼が腐ってる中学生のクソガキにもお薦め。
冗談です。

収録作で「驢馬の皮」だけ韻文で書かれているものらしく、瀧澤さんもあとがきで翻訳に際して散文に直してしまっていると断りを入れている。
シェイクスピアなどに代表される原文の韻のリズム感を翻訳でも再現するというのは非常に難しく、あまり無理をして韻を重視するあまり意味の分からない翻訳になってしまうぐらいなら、いっそ本書のように韻など無視して翻訳して貰ってもいいと思う。
つまり両立している河合祥一郎さんはすげーなって話。

閑話休題
以下収録作の紹介と、ペローに倣い私なりの教訓をそれぞれ。

「猫の親方あるいは長靴をはいた猫」

表題作。
二人の兄に遺産を(猫以外)全て持っていかれて素寒貧な主人。
遺産の猫は主人に長靴を貰い、兎や鷓鴣を狩ってはカラバ伯爵という架空の貴族からの贈り物だと言って王様に取り入る。
猫の計略でカラバ伯爵に仕立てられた主人は美しいお姫様と結婚して幸せになりましたとさ。

教訓:猫を飼え

「赤頭巾ちゃん」

具合が悪くて寝込んでるBBAの見舞いに駆り出された赤頭巾。
道中で狼に「どこに行くのか」と話しかけられペラペラとBBAの住所を喋る赤頭巾。
狼はBBAの家まで先回りしBBAを食べるとベッドに潜り込んで赤頭巾が来るのを待つ。
その後何も知らずにノコノコやってきた赤頭巾も狼に食べられちゃいました。おしまい。

教訓:個人情報の扱いには注意しましょう

「仙女たち」

二人の娘を抱える寡婦がおりました。
姉は性格も顔も母親似で感じが悪く高慢ちき、妹の方は亡くなった父親似の親切で器量良しでした。
母親は自分に似ている姉ばかりを可愛がり、虐げられている妹はある日水汲みに出かけた際に老婆を助ける。
実は仙女だった老婆はお礼に妹が喋る度に口から花か宝石が飛び出る魔法をかける……お礼?!
その話を聞き羨んだ母親は姉にも水汲みに行かせ仙女を助けて同じ魔法をかけて貰えと嗾ける。
今度は貴族に変身してやってきた仙女は姉にも助けを乞うが、不親切な姉は仙女以外には用が無いので助けようとしない。
仙女は姉が喋る度に口から蛇かひき蛙が飛び出る呪いをかける。
妹は王子様と結婚して幸せに暮らしましたが、姉は母親からも勘当され森の片隅で野垂れ死にました。

教訓:とりあえず親切にしろ。お礼は有り難く受け取っとけ。

「サンドリヨンあるいは小さなガラスの上靴」

いわゆるシンデレラ。
継母と二人の姉に虐げられていた美しいサンドリヨンは仙女に魔法をかけてもらい舞踏会へ行く。
王子様は舞踏会でサンドリヨンに一目惚れするが、サンドリヨンは12時になると慌てて走り帰ってしまう。
その時に落として行ったガラスの靴を手掛かりにサンドリヨンを探す王子様。
ガラスの靴は小さく華奢で国中の誰も履けなかったが、サンドリヨンの足にはピッタリはまり、サンドリヨンは王子様と幸せに暮らしました。

教訓:人生の負け犬が一発逆転するためには魔法のごとき力を振るえるパトロンが必要

「捲き毛のリケ」

ある国の王妃様が男の子・捲き毛のリケを産みましたが、その子はとても醜く不格好でした。
居合わせた仙女は「リケは将来たいへん知恵のある人間になるから皆から好かれる」と言い、リケに「自分が一番愛する人に自分と同じぐらいの知恵を授けてあげられる力」を与える。
その後、隣の国の王妃様も二人の女の子を産みましたが、姉は美しく妹は醜かった。
居合わせた仙女は「姉は美しいが知恵が足りない大人になる、妹は醜いがその分沢山の知恵を授かるでしょう」と言い、姉に「自分が好きな人を美しくすることのできる力」を与える。
姉は美しく成長したが頭がカラッポの馬鹿で、社交の席では外見は劣るが賢い妹に負けてしまう。
姉が森で悲嘆に暮れていると向こうから捲き毛のリケがやってくる。
リケは姉姫に一目惚れし、彼女に知恵を授けてあげるから自分と結婚してくれとプロポーズする。
馬鹿な姉姫が応えに窮しているとリケは「1年待つからその間に答えを決めてください」と言って去る。
その1年の間に姉姫はメキメキ知恵を付けて見違えるほど賢く成長した。
1年後リケと再会した姉姫はリケの醜い外見をようよう思い返して「知恵を授けられてアレコレと物事を考えられるようになった今、前にもまして決断をすることができなくなってしまった。もし貴方がわたしと結婚したかったのなら知恵など授けず馬鹿なままにしておくべきでした。貴方は知性も気質も完璧ですのに、外見だけが……」と言う。
「仙女が貴女に好きな人を美しく変える力を授けてくれていますから一度わたしのことを好きになってみてください」と言うリケに応じて姉姫が「貴方が世界一美しい人になってくれたらと心から思います」と言うとリケがみるみる美男子に変わっていく。
しかし他の人が言うにはリケは決して美男子になど変身しておらず、「恋は盲目」というように姉姫の眼からはリケの外見上の欠点全てが愛おしく映り始めたにすぎないのだと。
こうして二人は幸せに結ばれましたとさ。

教訓:※ただしイケメンに限る。

「眠れる森の美女」

悪い仙女に「糸繰り車の紡錘」に刺されて死ぬと呪いを掛けられたお姫様。
善い仙女がなんとかかんとか「紡錘に刺されても死にはしないが100年の間長い眠りにつく。100年後に王子様がやってきて姫様を目覚めさせる」と呪いを上書きする。
王様は国中に「紡錘の所持を禁止する」とお触れを出して姫様を守ろうとするが、15,6年後別荘に出掛けた際に不運にも紡錘で指を刺してしまう姫様。
七里靴(一歩で七里歩ける優れもの、ただし使うとすっごい疲れる)で駆け付けた善い仙女は姫様が目覚めたとき不都合しないよう給仕や料理人などの召使も魔法でついでに眠らせると別荘の城に人を寄せ付けないよう周囲の森を茨で囲む。
100年後、眠り姫の噂を聞きつけたとある王子様が別荘にやってきて姫様を眠りから目覚めさせる。
恋に落ちた二人は密かに結婚する、というのも人食い鬼の王妃様を恐れたため。
国王が亡くなった後、正式に結婚をした二人。その後戦争が起こり姫と二人の子供を王妃と共に残し戦地に向かう王子もとい王様。
王の不在をこれ幸いと姫と子供を食べてしまおうと考える王妃、料理人にまず長男を殺して料理しろと命令する。
料理人は長男を自分の家に隠し、代わりに仔羊の肉を料理して王妃に出し騙す。
その後も次男、姫様の肉を所望する王妃に家畜の肉を料理して騙すが、ひょんなことから王妃にバレてしまう。
激おこ王妃は蟇や蝮蛇を一杯に入れた大きな樽に姫や子供、料理人など自分を騙した連中を飛び込ませ処刑しようとするが、寸前で王様が帰宅。
王妃は自らの絶望的な立場を察し、自らが用意した処刑樽に身を投げる。

教訓:食人はアカン。

「青髭」

ある処にお金持ちだが髭が青くて気持ち悪い男がおりました。
この男の近所に美しい姉妹がおり、青髭はどちらか片方の娘を嫁にくれと言う。
青髭には今まで何人ものお嫁さんがいたが、その全員が今はどこにいるのか行方が知れないという噂があった。
姉妹は最初二人とも気味悪がっていたが、妹のほうが青髭とだんだん親しくなっていき、いつの間にか気味悪がっていた青い髭も気にならなくなったので青髭と結婚することにしました。
一月後、青髭は大事な用事があり6週間留守にすると言って妹に家のあらゆる場所の鍵を渡す。
しかしその中の一つ、一階の長廊下のはずれにある小部屋の鍵だけは絶対に開けてはならないと言う。
妹はついつい気になって小部屋の鍵を開けてしまう。
するとそこには床一面に固まった血が広がり、壁には沢山の女の屍体がぶら下がっていた。
妹は取り乱して鍵を床に落としてしまい、床の血が鍵に付いてしまう。
青髭はあらかじめその鍵に魔法をかけており、血の汚れは拭いても拭いても落とすことができなかった。
とうとう青髭が旅から帰ってきて小部屋に入ったことがバレてしまう。
激昂した青髭は妹を殺そうとするが、寸前のところで彼女の兄弟が駆けつけてきて青髭を打ち斃し事なきを得る。

教訓:押すなよ、絶対押すなよ‥‥‥ぁ押すなってぇッ!!

「親指太郎」

ある処に木こりの夫婦とその子供7人の兄弟がいました。
末っ子は身体が小さく弱く無口で親指太郎と呼ばれ家中の者からいじわるされていました。
ある年、生活が苦しくなり食べる物が無くなってしまう。
夜中に木こりの夫婦は7人の子供たちを捨てる相談をしている。
いつものように森へ子供たちを連れて行って薪を拾わせている間に自分だけコッソリ帰ってこようと話しているのを親指太郎は盗み聞きする。
親指太郎は朝のうちに小川で小石を沢山拾っておいて木こりに森へ連れていかれる道々小石を落として行く。
木こりは子供たちを深い森の中に残して計画通りコッソリ一人で家まで帰ると折悪しく10エキュの大金が舞い込み子供たちを捨ててきたことを後悔する。
一方親指太郎は泣いて慌てる兄たちを宥めて小石を辿って家まで帰っていき、無事帰って来た子供たちを木こり夫婦は驚きと喜びで迎え入れる。
またしばらくして生活が苦しくなり、夫婦は再び子供たちを捨てようとするが、その話もまた盗み聞きしている親指太郎。
親指太郎はこんどはパンをちぎって道々置いていくが、パンの道しるべは小鳥に食べられてしまい前のように家に帰ることができなくなる。
狼が生息する暗い森を彷徨う子ども達はなんとか明かりの灯った家を見つけ泊めてもらおうとする。
その家の奥さんが迎え入れてくれるが、彼女の夫は人食い鬼だから見つからないようにベッドの下に隠れているように言われる。
しかしまんまと人食い鬼に見つかってしまい翌朝食われてしまうことに、親指太郎は眠っている人食い鬼の7人娘たちが被っている金の冠と自分たちのナイトキャップをこっそり付け替える。
子供たちが寝静まったころ、人食い鬼は「逃げられない内に首をはねておこう」と暗い子供部屋に手探りで入ってくる。
親指太郎たちの頭を触り金の冠があるのがわかると「これは大変、とんでもないことをするところだった」と自分の娘たちの方へ行き、彼女らの首を切り落としてしまう。
人食い鬼が安心して寝入り始めると親指太郎は兄弟を連れてコッソリその家から逃げ出す。
翌朝人食い鬼が起きるとベッドには7人の娘が首をはねられ無残に死んでいるのを発見する。
怒り狂った人食い鬼は親指太郎たちを七里靴で猛然と追いかける。
そのとき親指太郎たちは家のすぐそばまで帰ってきていたのですが、追いかけてきた人食い鬼を見つけた親指太郎は兄弟とともに岩穴に隠れ様子を見ることに。
急いで追いかけてきた人食い鬼は疲れて岩の上でうとうと眠りはじめる。
親指太郎は人食い鬼の足から七里靴をコッソリ奪い取り、その靴を利用して軍令や郵便の仕事をして大儲けしました。

教訓:子作りは自身の収入とよくよく相談して計画的に。

「驢馬の皮」

とある処に強大で裕福な大国がありました。
というのもその国の王様が金の糞をする驢馬を飼っていたからです。
ある日王様が熱愛していた王妃様がお亡くなりになりました。
その娘のお姫様は王妃様に似て美しく成長し、王妃を凌ぐ美人になりました。
王様はあろうことかお姫様に恋をしてしまい結婚を迫ります。
困ったお姫様ま仙女になんとかして結婚の申し出を断る策を相談し、「○○してくれたら結婚します」といった達成困難な条件を出していく。
「時の色のドレス」や「月の色のドレス」といった無理難題を要求するが、その度に王様は国中の人間を総動員してその要求に応えていく。
とうとう姫様は今や国の財源に等しい驢馬の皮が欲しいと要求するが、王様は意に介さず驢馬の皮を剥ぎ姫に手渡す。
その驢馬の皮をみて恐ろしくなった姫様は仙女から魔法の箱とそれを呼び出すための棒を貰い、箱に服や鏡や下着、ダイヤやルビーを詰め込んで驢馬の皮を仮面のように被ってコッソリ遠い国に逃げ出す。
驢馬の皮を被った姫様は遠い国の農地で下女として住込み働きを始める。
姫様は下男たちのからかいに堪えながら一生懸命働き、休みの時には魔法の箱を取り出しては部屋の鏡の前で華麗な衣装を着ることだけが楽しみでした。
ある日、その国の王子様が薄暗い小路で迷子になっているとき、ふとある部屋の鍵穴を覗き込みました。
そこには鏡の前に立つ美しい女性がおり、王子さまはその女性に一目惚れしてしまいます。
近所の人間にその娘の素性を尋ねると「それは驢馬の皮と呼ばれている醜い娘だ」と言われる。
宮殿に戻った王子様は恋わずらいでふさぎ込んでしまい、心配する王妃様に「驢馬の皮の手作りお菓子が食べたい……」と言う王子。
王妃から手作りお菓子を作ってくれるよう頼まれた驢馬の皮姫はパン菓子の中にコッソリ自分の指輪を入れる(異物混入)。
大喜びでお菓子を頬張る王子は危うく金とエメラルドの指輪飲み込みそうになる。
王子をその指輪の持ち主を国中で探すがとても細い指の人にしか指輪は嵌められなく、驢馬の皮姫だけがその指輪に指を通すことができた。
王子様と驢馬の皮姫はめでたく結婚する運びになり、その結婚式に驢馬姫の父親の王様も現れたが、王様は娘に欲情したことを反省しており今や真っ当な父性愛しか持っていませんでした。

教訓:YesロリコンNoタッチ。

童話や昔話の原典ってのは時として意外と血なまぐさかったりエグかったりして大人になってから読むと中々味わい深い物です。
子持ちの皆さまに於かれましては是非とも今宵のベッドサイドストーリーとしてペロー童話を読み聞かせるのをオススメします。
ペロー先生による各話の真っ当な教訓は是非ともご自分でお手に取って読んでみてくださいな。

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