映画感想

男女の悲喜交々漫談『アニー・ホール』感想

投稿日:2017年3月14日 更新日:

アラサーともなるといい加減「ラブストーリー」だの「青春の苦悩」といった題材の作品をわざわざ自分から摂取しようという気力が湧かなくなってきて本作の主人公同様「人生の危機」を感じている私です。
ウディ・アレン監督の作品は今まで全然観ていなくて、唯一観た『ミッドナイト・イン・パリ』が凄く面白かったのでいつか他作品も観たいなぁとは思っていました。
しかしながら40作以上ある彼のフィルムワークの中からどれを観れば良いのやらと手を出し渋っていたのですが、アカデミー賞を始め多数の賞を獲得し各所で傑作と誉れ高い『アニー・ホール』を今回鑑賞してみました。
まずはザックリと本作のあらすじから――

主人公アルビー・シンガーの回想から始まる。
偏屈なユダヤ人夫婦の元に産まれ、実家はブルックリンの遊園地内のローラーコースターの下という数奇な生い立ちが影響してか世の中を斜に構えて見るペシミスティックな大人に成長した彼はニューヨークでコメディアンとして活動している。
ある日、友人にテニスに誘われた先で出会ったアニー・ホールという女性と出会う。
アルビーとアニーは互いに惹かれ合い、トントン拍子で同棲生活を始めるが、月日を重ねるごとに相手の厭な部分が見えてきて次第に倦怠期に入っていく。
些細な口論から一度別れる二人だが、アニーから復縁を持ちかけられまた付き合い始める。
そんな折り、ナイトクラブで歌っていたアニーは業界人の男性にスカウトされ、カリフォルニアに来ないかと誘われる。
これを機に二人は別居することを決めるが、今度はアルビーがたちまち後悔しアニーに復縁しニューヨークでまた暮らそうと懇願する。
しかしアニーの心は既にカリフォルニアでの歌手活動のことで占められており、二人の関係修復は叶わなかった。

正直申し上げると一度目の視聴ではピンときませんでした。
ストーリーについての前知識も無いまま視聴していたのもあって視聴中はこの話が一体どこに向かっているのかも一切掴めず、そろそろ飽きてきたなぁって所でエンドロールが流れてくる――みたいな。
もちろん所々クスリと笑う場面はありましたが、とにかく会話がひっきりなしに続く映画で字幕を追うので精一杯だったのもあり、本作の持つテーマや空気感をいまいち感じ取ることはできませんでした。
どんな映画も一度鑑賞して終わりではなく何度も(最低限2回)鑑賞するようにしているのですが、二度目に吹き替えで視聴した際はなるほどやたらと笑えました。
主人公アルビーの声をあてている羽佐間道夫さんの芝居が素晴らしいですね!
喋り方のちょっとしたニュアンスだけでついつい笑わせられてしまうんですよ!
アルビーとアニーがテニスクラブで初めて出会う場面とか字幕で観たときは「お互いに変わり者なんだな」ぐらいにしか思わなかったのに、吹き替えで見ると「なんだこのマヌケな会話はw」と思わず吹き出してしまいました。
普段洋画では実際の役者の演技を観た方が良いと思い字幕で視聴し、吹き替えは稀にしか観ていなかったのですが、本作は吹き替えで観た方が圧倒的に楽しかったです!
たぶん自分に英語能力があれば最初の視聴でも笑いのツボを理解してちゃんと楽しめたのかもしれませんが。
何はともあれアニー役の小原乃梨子さん始め吹き替えキャスト陣は皆素晴らしい仕事をされていたので、本作をこれから鑑賞される方には是非吹き替えでの鑑賞もオススメしたいです。

男女関係について、私はお世辞にも豊富な経験があるとは言えない身なれど、締めの「卵」の喩え話はわかるような気がします。
愛だの恋だの言ってても結局は相手から何かしら得る物が無いと関係性って維持できないんですよね。
アルビーとアニーは互いに足りない物を補い合っていた共依存のような関係だったように思うのですが、アニーから見れば悲しいかな、アルビーはもう卵を産む雌鶏では無くなってしまった。
お役御免。
これは何も男女関係に限った話ではなく、仕事関係や友情、時には家族関係だって例外では無いのだろう。
別れ話をする機内でのアルビーの台詞「関係というのはサメと同じで常に前進してないと死ぬ」はまさしく言い得て妙だ。

冒頭、アルビーの台詞で「なぜぶちこわしになったかを考えてる。1年前は愛し合ってたのに」という自照的な問いかけがある。
そういった視点からこの作品を視聴すると、観た人それぞれで違った答えが出てきそうです。
人によっては「ほいほいとビバリーヒルズなんぞに行くべきじゃなかった」と言うでしょう。
いやもっと以前に「アニーに精神科医への通院を薦めるべきでは無かった」、それどころか「アルビーこそ15年も通院してないで早々に教会にでも行けば良かったんだ」とまで言う人もいるかもしれない。
アニーに大学行きを薦めるべきじゃ無かった?
必死の声音で呼び出されたからと言って夜中に会いに行くべきじゃなかった?
お堅い本を彼女に押し付けて自分好みの女にしようとすべきじゃなかった?
最初のナイトクラブにシンガーとして出た際の失敗を思ってもいないお世辞で慰めるべきじゃなかった?
アルビーとアニー、二人の破局の原因を皆さんはどう考えるでしょうか――

あとはアニー役のダイアン・キートンが劇中で着ていた服装が可愛かったですね。
ダボダボのメンズジャケットを履いたりネクタイを締めたり、「アニー・ホール・ルック」なんて言われてファッション業界への影響もあったそうで。
『ココ・アヴァン・シャネル』でのオドレイ・トトゥのファッションを思い出しました。

以上、『ゴーン・ガール』とは違ったベクトルで「カップルや夫婦で観てはいけない映画」と言える北米版蜻蛉日記『アニー・ホール』の所感でした。

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