映画感想

SF好きは要チェックな映画『月に囚われた男』感想

投稿日:2017年3月13日 更新日:

近所のTSUTAYAで面出しされていたジャケットが気になり観たいなぁとずっと思っていた作品。
黒地に白の同心円模様と宇宙服姿の主人公が組み合わされたミニマリスティックなデザインのジャケ。
内容もジャケットを体現するかの如く非常にシンプルな舞台セットと少人数の役者しか出てこないのですが、低予算にも拘わらずその縛りを感じさせない丁寧で説得力のある絵作りと地に足の着いた脚本の良作です。
本作がデビューとなる監督のダンカン・ジョーンズはかのデヴィッド・ボウイの息子さんだそうで、父親譲りの類稀な才能を発揮しています。
原題は『moon』とシンプルなのですが、日本リリースではデヴィッド・ボウイの『地球に落ちて来た男』を彷彿とさせる邦題が付けられています。

近未来。月の裏側で新たなクリーンエネルギー「ヘリウム3」が発見される。
今や地球のエネルギー需要の7割を占めるこの資源の採掘・供給を担うのが「ルナ産業」という(韓国?)企業。
ルナ産業が管理する月面基地で勤務しているのは主人公のサム・ベルと人工知能のガーティ。
サムの雇用契約期間3年が終了するまで残り2週間という時、基地外で月面探査車を運転中に不可解な幻覚を見て衝突事故を起こしてしまう。
基地内のベットで昏睡から目覚めたサムは本社の上司やガーティの静止を無視して事故現場に戻ると、事故車の中に血まみれで瀕死の自分自身を発見する。

とまぁこんな感じのストーリーです。
ビーム兵器や巨大ロボが出てくるような大味SF作品より本作のような現実の科学技術から飛躍しすぎてないレベルのSF作品の方が私は好きです。
監督自身がかなりのSFファンだからか本作の随所に過去の名作のオマージュや影響がみられるのですが、パッと見で多くの人が思うのは『2001年宇宙の旅』ですよね。

人工知能のガーティは正にHAL9000的な「フランクなセリフ」を「無機質な声」で喋る不気味なAI。
物語前半はガーティもルナ産業と一緒になって主人公を真実から遠ざけるような行動をしているのが、後半になると一転して主人公に協力的になるのが違和感を感じる人もいるようです。
個人的にはガーティはアイザック・アシモフが描いていたような「ロボット工学3原則」に則ったAIなのかなぁと想像したりしてます。
①ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
②ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
③ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。
ガーティはサムからクローンについて質問をされても答えずにわざとらしく話題を逸らすが、これは「真実を告げればサムが傷付く」と判断して喋れないのかもしれない。
アシモフのロボット小説に人間を慮ってありもしない出鱈目な嘘をつく『うそつき』という短編があったりします。
ガーティはサムに対して作中で何度も「君を守るのが僕の仕事だ」とも言ってまし、サムが「このままルナ産業の奴らに俺たちが殺されるのを見過ごすのか」といった事を尋ねるシーンではガーティは「まさか」(何をおっしゃいますやら!)と否定してサムたちに協力してクローンをもう一体覚醒させます。
基地からの脱出前にもガーティ―はサムに対して自身の初期化をして証拠隠滅を提案します。
HAL9000が任務遂行の為に人命すらも切り捨てたのとは対称的ですね。
そう考えるとますますガーティというキャラクターが愛おしく感じられます。
『インターステラー』の「TARS」ほどは融通が利かない感じがよりロボットっぽくって良い塩梅ですよ!

低予算なだけあってCGは少しチープさを感じるかもしれませんが物語の没入を妨げるほどではありません。
クローンという題材を扱っているので、一画面に同じ俳優を合成で重ねているのですが、この点は全く違和感が無いです。
物語の説得力を持たせるために力を入れなきゃならない部分、そうじゃない部分の取捨選択がちゃんと分かっているなぁと思いました。
企業が利潤を追求するあまりクローンを非道徳的な形態で雇用している本作の設定は遠くない将来起こるかもしれない地続きなリアリティも感じさせます。
スタニスワフ・レムの『ソラリス』やディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』(もしくは『ブレードランナー』)にも通づる、人の尊厳やアイデンティティに纏わる哲学的なテーマ性もあり、昨今の映画では珍しいSpeculative Fiction(思弁小説)をやろうとしてる様な好感を感じさせる作品でした。
同監督の次作『ミッション:8ミニッツ』も近いうちに観てみたいなぁと思います。

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