映画感想 雑記

それなりな映画『バケモノの子』感想

投稿日:2017年3月7日 更新日:

いまさらながら映画『バケモノの子』を観ました。
面白かったです。
それなりに。

‥‥THE 淡泊ッ!!
この煮え切らない書き出しから察して頂けるように手放しで絶賛するにはイマイチ釈然としな部分がちょいちょいあるのです。
それでもやはり一定以上の面白さはある作品を毎回世に送り出している点はさすがだと感心いたします。
細田監督作の中では個人的には『時をかける少女』が一番好きな作品です。
シンプルに楽しめるエンタメ作品でストーリー展開に余計な描写は無いし大きな瑕疵も無いので。
対して今作『バケモノの子』は展開がちょいと取っ散らかっている部分があるのかなぁと思わざるを得ません。
とはいえ繰り返しますが一定以上は楽しめる作りにはなってると思いました。
鑑賞中に退屈して欠伸が出るようなことは無いですし、アニメーションの作画レベルも高く劇場の大画面で見たらさぞ興奮しただろうなというシーンもありました。

あらすじ
主人公・蓮は母親を不慮の事故で亡くし宛てども無く深夜の渋谷を彷徨っていたところバケモノの熊徹に出会う。
熊徹はとある理由から弟子探しをしていて蓮を勧誘する。
その後警察官に補導されそうになった蓮は偶然逃げ込んだ裏通りから熊徹らバケモノが住まう異世界・渋天街に迷い込む。
帰る場所の無い蓮は熊徹の弟子として渋天街で暮らすことを選び、熊徹は名乗らない蓮に対し「九太」という名を新たに名付ける。
修業や冒険を通して九太と熊徹の関係は師弟を越えて親子のようになっていき、長い年月が過ぎ17歳になった九太はふとしたきっかけから人間界へ舞い戻ることになり――

さて、今作に関してのネガティブな感想はネットやメディアの各所で言われていますし、私が感じた不満点もそれらと概ね同じでして。
成長した九太が人間界に戻ってからの物語後半~結末のパートが余りにツッコミどころが多いんですよね。
前半部分は純粋なファンタジー世界の出来事なので多少突飛なことが起きても許容できるのですが、後半人間界が舞台になってからは渋谷の景観とかをあんなに緻密に描いてしまった副作用もありリアリティの欠如やご都合主義が浮き彫りになってしまったのかも。

特にヒロインの楓、あのキャラクターは本当に必要なのだろうか?親子の絆の物語というだけでも十分なボリュームがあるのにラブストーリーまで絡めるのは流石にカロリー過多に感じたというのが鑑賞後の正直な感想。
しかし物語に恋愛要素があると盛り上がるというのは確かにその通りだとは思うのでやり方の問題なのかなぁとも思います。
例えばヒロインキャラは楓のように人間界の住人ではなく渋天街のバケモノにした方がもっとスマートに恋愛要素を入れ込めたのでは無いでしょうか。
そうすればラストの凱旋パレード(?)でヒロインを出しても違和感無く絞められたのでは無いか。
そもそも『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』とケモ耳ヒロインを出して国内外のケモナーの熱い支持を集めていたというのに何故よりによって今作で出さないの!?
ただそうなると九太は人間界に戻らず渋天街に残るというオチが結末として自然になると思いますが、ぶっちゃけそれで良くないですか?
むしろ九太を次期宗師にしちゃえばいいじゃん!
だってこの映画のタイトル『バケモノの子』だよ?今作の結末じゃ九太は結局「ニンゲンの子」じゃない?タイトル詐欺ですよーッ!!

今作における敵役の一郎彦の着地点にも不満がある。
一郎彦は結局渋天街に戻りおそらくこの先もバケモノたちの世界で生きていくのだろうと思うのですが、無理じゃない?
だって大衆が観てる中で宗師を刺傷した重犯罪を犯してるんですよ!?彼に対する家族の愛情は揺らがないとしてもその他の民衆からは確実に迫害されるでしょうwしかも当人は犯行当時の記憶を失っているという救いの無さ。(絶句)
もし前述のように九太が渋天街の宗師になれば、まあ何とか一郎彦の立ち位置をフォローするようなエンディングエピソードも描けるんじゃないかなぁと愚考。

宗師決定戦でのバトルシーンは素晴らしい作画で見せてくれるのですが決着の付き方にも釈然としないものがありますよね。
熊徹がダウンして10カウントが流れるシーンですがカウント9の所で九太が試合進行を妨害してお涙頂戴な応援演説を始めるんですよ。
熊徹はダウンしてから悠々1分近くのんびりした後立ち上がり試合再開。
視聴者も背景モブ観客も困惑です。
熊徹のクロスカウンターが炸裂し猪王山がダウンしたときは無常にキッチリ10カウント数えられて猪王山は負けてしまうというアンフェアな決着は現実世界における闘争の理不尽さを如実に表しているという事なのでしょうか。
一応フォローしておくと、試合前のルール説明では「10拍の間失神したものは負け」と言っていて熊徹はカウント9で意識を取り戻している様子ではあるのでルール上問題は無いのです。
ルールが変則的ィッ!!

メルヴィルの『白鯨』を作中で出した意味合いもイマイチ弱い気がします。
楓のセリフ「主人公は自分の片足を奪った憎いクジラに復讐しようとしている。でも実は主人公は自分自身と闘っているんじゃないかな。」「つまりクジラは自分自身を写す鏡で‥‥」が恐らくラストバトルの展開の暗示という事なのでしょうがいくらなんでも薄っぺらい引用に思える上、大人だけでなく小中学生でに観れるファミリームービーという体裁を考えるとぶっちゃけ余計な要素に感じます。ガキンチョ的には「ハクゲイ?ナニソレ?」ですよ。
あんな謎の鯨スタンド出すぐらいなら、一郎彦は猪王山のような「長い鼻」や「立派な牙」を欲していたという設定があるのだからもっと単純に巨大で邪悪な『もののけ姫』でいうところの「乙事主(おっことぬし)」のようなイメージで出した方が分かりやすかった気がします。
でもまぁ鯨スタンドの絵的な派手さは確かにありました、それは認めます。
「なんで鯨なん?」という疑問が頭をもたげて熱中しづらかったですが。
というかあれでしょ?文学作品の引用とかしとくとちょっと高尚でインテリっぽく見えますもんね、わかるわかる(自戒)

そんな一郎彦が町中で暴れていると「人間界と渋天街は互いに響き合っている」らしく被害が渋天街にも波及しているというシーンがあるのですが明らかにぽっと出の設定過ぎませんか?
意図はわかります。
人間界での出来事とはいえバケモノたちにとって対岸の火事では無いんだということを言いたいのでしょう。
なせならクライマックスで熊徹の刀を人間界の九太に届けるために登場させたいから。
にしても取って付けた感は否めないです。

そもそも何で九太の両親は離婚したんですか?
母親が親権をもっていたり親戚が誰一人として母親の死をすぐ父親に知らせなかったことから考えて父親に非があって離婚したんじゃないかと邪推できちゃいますし、その辺りの真相がなぁなぁな状態のまま親子として和解さましても‥‥。
そしてもちろんヒロインの親子関係も別段解決などせず。
それら問題を放置したままあの熊徹のあっけらかんとした笑いで締めるというのは観ていて高度な煽りにしか感じられず神経を逆なでされます。

こう不満点を挙げていくとキリが無いのですが、細田監督が本作で言いたい事は「胸ん中の剣が重要なんだよ!」や「忘れないで。私たちいつだってたった一人で闘ってるわけじゃないんだよ。」といった感じで登場キャラがセリフで逐一言ってくれるしよく分かる。
そのメッセージ性自体は王道で快く結構な物だとは思います。
作画は文句無しに素晴らしく、演出もしっかりツボを抑えており、劇伴や声優陣も良い仕事をしているだけに脚本の粗さが非常に惜しく感じる一作でした。
次回作はあれもこれもと要素を詰め込まずに、それこそ『時をかける少女』ばりにシンプルな作品を期待しつつ自分の股の間の小太刀を研いでおきます。
まぁでも、面白かったですよ?
それなりに。

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